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住友商事の働き方改革事例(後編)

本社移転を「働き方改革」の好機と捉え─
「テレワーク・スーパーフレックス制度」導入へ

投稿日:2018-10-10  最終更新日:2019-04-09  取材日:2018-08-06

住友商事株式会社が取り組んだ事

  • テレワークトライアルを実施し、参加組織同士での意見交換会を開催
  • 現場の意見を積極的に取り入れ、社内への説明を丁寧に行う
  • テレワーク・スーパーフレックス(コアタイム設定なし)の導入
  • 会社規模

    5,000人

  • 業種

    卸売業

  • 対象職種

    全社員

今回お届けする、「住友商事の働き方改革[後編]」では、前編に引き続き、人事厚生部 課長代理・山田氏、小菅氏にお話を伺っていきます。

今回は、本社移転を機に発足した新しいプロジェクトチームによる働き方改革について、詳しくお話しいただきました。

本社移転をきっかけに、働き方改革は次のステージへ

「それでは、いよいよ、本社移転決定後の“働き方改革プロジェクト”ということで。その新しい取り組みについて、詳しく教えていただけますか?」

「はい。当社は、2018年9月に晴海から大手町へ本社を移転しましたが、この本社移転決定をきっかけに、2016年春に『本社移転・働き方改革プロジェクトチーム』を発足しました。」

「本社移転・働き方改革プロジェクトチームとはなんですか?」

「つまり、本社移転を単なる引っ越しという“作業”で終わらせず、働き方改革を推進する“好機”と捉え、全社的なプロジェクトとして取り組もうということです。『働き方改革』というと、一般的には人事主体と思われるかもしれませんが、当社の場合、プロジェクトリーダーを人材・総務・法務担当役員(副社長)として、各営業部門、コーポレート部門よりプロジェクトメンバーを選出し、全社一丸のプロジェクトとしている点が特徴です。」

「経営レベルでコミットしているというのは、プロジェクトの何よりの推進力になりますね。それでは、本社移転と併せて、このプロジェクトでは、具体的にどんな働き方改革を進めていく予定なんですか?」

「はい、新オフィスの環境整備、RPAや新ITツールの導入・活用、書類削減や会議のあり方の見直し等色々あるのですが、人事関連では、原則全社員を対象とした『テレワーク・スーパーフレックス制度』の導入です。今の時代、従来の枠(働く時間・場所・スタイル等)にとらわれず自律的かつ柔軟に働ける、そして一人ひとりが最大限パフォーマンスを発揮できる環境の整備が必要だと思っています。そのためにも、テレワークとスーパーフレックス(コアタイム設定なし)の導入は、最重要取り組み事項の1つとして位置付けています」

「テレワークと言っても様々な形態があると思いますが、御社はどういったものを検討されているんですか?」

「はい、当社は、『在宅勤務』、『モバイルワーク』、『サテライトオフィス』の3形態を考えています。サテライトオフィスはザイマックスさんのサービスを活用させていただいており、いつもお世話になっています!笑。

テレワーク、スーパーフレックスともに、高い付加価値を生み出すアウトプット志向の働き方を促進し、一人ひとりの最大限のパフォーマンス発揮に繋げることが目的であり、福利厚生的な制度ではありません。社員にはテレワーク、スーパーフレックスを、より高いパフォーマンスを発揮する一つのツールとして積極的に利用してもらいたいと考えてます。」

テレワークの全社導入に向けて

「勤務形態がテレワーク、スーパーフレックスになると、“効率的な働き方”ってどういうものなのかなって、自然と考えさせられちゃいますよね。少なくとも、“決められた時間にオフィスに出勤して”っていう、今までの働き方とは変わってくるわけで。テレワークやスーパーフレックス導入の決定を聞いて、社員のみなさんはどういう反応をされましたか?」

「我々が想定した以上にポジティブな反応が多かったという印象です。導入決定前に、テレワークトライアルを実施したことも大きかったと思います。事務局としては、とにかく現場の意見を積極的に取り入れ、社内への説明を丁寧に行うことを第一に心がけました。」

「ぜひ、具体的に説明お願いします」

「テレワークの課題抽出や効果検証を行うため、全社トライアルを2回実施、参加組織は公募形式で募りました。また、トライアルに関する全社説明会に加えて、テレワークで利用するICTツールに関する研修も開催しました。広報活動も積極的に実施したところ、2017年の第1回トライアルは1,000人規模、2018年春の第2回トライアルは2,000人規模という結果でしたね。」

「すごい大規模でのトライアルだったんですね」

「そうですね。一大プロジェクトですし、単にトライアルを実施して終了ではなく、テレワークトライアルの成功/失敗体験やそこから得られる知見・ノウハウをナレッジとして蓄積し、全社に共有・横展開することも重要だと考え、積極的に取り組みました。トライアル参加組織同士での意見交換会を開催し、そこで出た意見をイントラネットにアップして共有を図る、といったことも行っていきました。飲み会もやりましたね。」

「飲み会での意見も⁉ それは普段の会議では出ないような声も上がってきそうですね」

「そうですね。色々な現場の生の声が聞けて良かったですね。そういった声をオープンにしていくことは、とても大切なことだと思います。中には厳しい意見もありますが、そういったものも含めて、基本的には全ての情報をオープンにするように心掛けました。」

「それは素晴らしい! きっと多くの声が寄せられたんでしょうね」

「そうですね、おかげさまで。とはいえ、情報量が多すぎて閲覧性が損なわれてもいけませんので、レビューのサマリー版も設けています。興味のあるトピックがあれば詳細版へどうぞ、というふうに」

「なるほど、手厚い! 現場の声としてはどういった回答が多かったんでしょうか?」

「はい、嬉しいことに、7割以上の人が『テレワーク実施により業務効率が上がった』、『コストがかかってもサテライトを導入すべき』と回答してくれています。そして、これらのトライアル結果を丁寧に分析した上で、必要な社内承認手続きを経て、2018年11月からのテレワーク制度正式導入が決まりました。」

ICTインフラについて

「テレワーク推進には、ICTインフラの整備も不可欠だと思いますが、具体的な施策についてお聞かせいただけますか?」

「はい。現在、働き方改革の推進にはICTの活用が欠かせないと各所で指摘されていますが、当社も、ICTのインフラ整備・ツール導入を、いま取り組むべき最優先課題のひとつと位置付けています。“書類半減”や“ペーパーレス化”、“ヒト・ビジネスの見える化”などを目標に、関係組織と連携を取りながら進めています。

例えば、当社ではコミュニケーションツールの1つとして『Lync』を活用しています。『Lync』はいわゆるチャット機能だけでなく、Web会議や資料ファイルのやりとりも出来るので、社員間でのコミュニケーション促進や、書類の削減にも一役買ってくれています。あと、結構大変だったりするのが、名刺の管理、ですよね」

「そうそう! 名刺ホルダーなどで管理しようと思っても、枚数が膨大な場合は、並べ直したり、整理したりするにも骨が折れますよね。必要なときに、ぱっと取り出せない、なんてことも」

「そうですよね。ですので、当社では、『Sansan』という法人向けクラウド名刺管理サービスを全社で導入しています。こうして、各種ICTツールを巧みに使っていくことで、今まで物理的な制限・制約によって叶わなかったことも、少しずつ実現していけるようになってきています」

「ちなみに、こういったICTツールへと、みなさん、すんなりと移行できましたか?」

「いえ、もちろん、戸惑いを感じている社員も少なからずいると思います。WEB会議の実施なども推進してはいますが、それでも、全社的に見て、まだまだ浸透しているとは言いづらい状況ですね。IT講習なども実施しているのですが、なかなか…。ですが、本社を移転すればファシリティも刷新されるので、そんな移転後のより良い環境の中でなら、もっと気軽にICTツールが活用されるようになるのではないかと期待しています」

テレワーク・スーパーフレックス導入にあたってのポイント

「最後に、テレワーク・スーパーフレックス制度導入にあたって、注意したポイントなどはありますか?」

「はい。第一に、“性善説に立つ”ことです。社員を疑い、過度に管理しようとして制度を厳しくすればするほど、効果的な運用ができなくなり、本来の目的である自律的かつ柔軟な働き方の実現が難しくなります。第二に、“組織単位で実践する”こと。テレワークやスーパーフレックスを導入しても、それらの制度の利用者が少数派だと、働き方はどうしても多数派に引っ張られてしまって、結局、何も変わらなかったり、利用していない社員が不満や不公平感を募らせたりと、前向きに物事が進みません。
そして、最後に第三のポイントですが、それは、“まずはやってみる”ということです。ネガティブな要因ばかりを考えて立ち止まっているのではなく、ポジティブに、果敢に。マネジメント層が率先して実践していくことが特に大切なことだと、強く感じています」

「本社移転後の働き方改革の進展が、本当に楽しみですね。それでは、今回は貴重なお話、本当にありがとうございました!」

「こちらこそ、どうもありがとうございました」

新社屋の様子








この事例と同じシリーズの事例

今回協力して下さった企業様

住友商事株式会社

設立
1919年
本社所在地
東京都千代田区
事業内容
全世界に展開するグローバルネットワークとさまざまな産業分野における顧客・パートナーとの信頼関係をベースに、多様な商品・サービスの販売、輸出入および三国間取引、さらには国内外における事業投資など、総合力を生かした多角的な事業活動を展開しています。
(参照:住友商事. 会社概要. https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/about/company/profile)
従業員数
5,261人(連結ベース 73,016人)(2018年3月31日現在)
Webサイト
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp

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