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リコーグループの働き方改革事例

脱“働かせ方”改革~働きがい改革を目指して~

投稿日:2019-03-04  最終更新日:2019-03-04  取材日:2018-12-27

  • 会社規模

    97,000人

  • 業種

    製造業

  • 対象職種

    全社員

2017年4月に山下良則氏が新社長に就任、「リコー再起動」として聖域を設けずに改革に取り組むなか、全社プロジェクトの一つとして“働き方変革”をスタートさせた株式会社リコー。2018年1月には本社を銀座から東京都大田区中馬込に移転し、その取り組みをさらに加速している。実は、以前にも取り組みをしていたものの、思うように全社員まで取り組みが浸透しないという苦い思いがあったといいます。この時の反省をバネに、社員主体の“働きがい改革”を目指したリコーグループの働き方変革について、生産現場での取り組みも含め、お話を伺いました。

やらされ感で改革は進まない

本日はよろしくお願いします。

こちらこそよろしくお願いします。

早速ですが、御社で働き方改革が始まった経緯から教えていただけますか?

はい。これまでも“ワークスタイル変革”として社内では色々と取り組みを進めていました。でも、なかなか全社的な取組みにはならず「正直上手くできていないよね…」という声も多くあり、改めて会社の重点テーマとしてスタートしたのが2017年4月。社長交代がきっかけでした。

新社長の強い意志が最初にあったのですね。

はい。社長直下の全社プロジェクトという位置づけで「働き方変革PT(プロジェクトチーム)」が設置され、新たに任命された担当役員と共に、どういうふうにやろうか議論して進めていったかたちです。
そもそも何が課題なのか?何を目指すのか?私たちが目指す働き方変革って何なのか?という原点に立ち返ってもう一回やっていこう、と。

なるほど。1から考え直していった、と。

そうです。なぜできていなかったのかを紐解くために社内外の環境をリサーチしたり、社員の声を拾いながらずいぶん検討しました。その結果、社員のエンゲージメントを高めていくことが大事だ、という結論に至りました。
今まで上手くいかなかった理由として、「残業減らしなさい」「効率上げなさい」「無駄な仕事をなくしなさい」といった、会社からのやらされ感があったのではないか?と。これでは会社主体の“働かせ方改革”です。今回はそうではなくて、社員自らが「よかったね」と思えるような、社員の働きがいにつながるものにしよう、社員主体の“働きがい改革”にしよう、ということになったのです。

やらされ感からくる改革では上手くいかなかったんですね。

はい。ですから以前と違って残業削減目標みたいなものは、このプロジェクトでは一切設定していません。
目指す働き方は、いきいきと働くこと。それをきちんと言葉で表そう、ということで “働き方変革”で実現したいこととして5つ挙げました。

①時間と場所にとらわれず働き方を選ぶ
②先進的で快適な環境で働く
③明るく風通しが良い職場で、楽しく働く
④互いへの信頼のもと、自律的に働く
⑤チャレンジを称えあい、協力し合う

以上、5つの目指したい姿を出して、それぞれの領域で具体策を出しました。

なるほど、きちんと明文化したんですね。具体的にどんなことをしていますか?

例えば、①時間と場所にとらわれず働き方を選ぶ、ということであれば、これまでの在宅勤務制度を見直してよりテレワークを推進したり、仕事に応じて働く場所を選ぶ環境を整えたりしています。ZXY(旧ちょくちょく...)などの場所を上手く使って効率よく働けるようにしていこうよ、というトライもその一つです。
今までの「まず残業減らしましょう」とか「ムダをなくして効率化しよう」よりも、目指す姿に向かってみんなが「いいね!」と思えるような施策に特化する方へ軸足を置き換えてやっています。

数値目標をあえてなくした

定量的な数値指標に主軸を置く企業も多いですが、定性的な指標でもいいじゃないか、と。

そうです。そこは担当役員含めて2ヶ月くらい時間を掛けて議論しました。
担当役員からも「数値目標はある程度見なくてはいけないけれど、そこを大きく打ち出してそれが目的化してしまうような、数字を追う活動にはしたくないね!」と初めから言われており、そこは私達もまったく同感でした。私達が目指す①~⑤の働き方を総合的に実現できていれば良いじゃないか、ということで。
測定の仕組みは、意識調査の中の社員のエンゲージメントの向上であるとか、そういう定性的なものでもいいよね、と。これをやっていけばアウトプットも良くなるだろうし、という考え方で、このプロジェクトでは残業時間低減などの数値目標は全く設定していません。

数値目標なしとは、かなり思いきりましたね!

例えば、リモートワーク制度であれば登録者数の推移などの数字はもちろん捉えていますが、あくまで目的化せずに、最終的にはそれぞれ5つの目指す姿が実現してエンゲージメントが高まれば良い、社員意識調査の中の該当するそれぞれの項目が上がっていけば良し、としています。

そうなんですね。それぞれの施策は移転と同時にスタートを?

フリーアドレスにしたのは移転がきっかけです。他にもリモートワーク制度やショートワーク制度という短日数・短時間勤務制度も育児介護理由以外にも使えるようにしました。ITツールや遠隔会議などをよりやりやすくできるインフラ基盤を整えたのもこのタイミングでした。

今回お話を伺った働き方変革PT 児玉様

ちなみに、プロジェクトメンバーはどんな方々で構成されたんですか?

プロジェクトに最初に集められたのは4~5人でした。人事やIT、広報など各分野から一人ずつ、というようなイメージで。ただ、それだけだと具体的な推進には足りませんから、そこに関わる総務部門はじめ関係区に徐々にワーキンググループのような形をつくり、いろいろな人を巻き込んだ活動をしています。

社員の意識啓発について

トップダウン型で始まった変革が、働きがいに主軸を移してボトムアップ型に移行するということで、従業員への意識改革にも力を入れたのではないですか?

そうですね。ルールやツール、場所を整備しても意識や風土が変わらないといけませんから、意識変革の取組みも力を入れています。
例えば、1on1でコミュニケーションのやり方を変えることを全社で始めました。
あとは意識啓発のために働き方改革フォーラムを半年ごとに開いて、外部のゲストを招いて講演なども行って刺激をいただいたり、会社の方針を伝えたりしています。

一度説明して終わりではなくて、継続的に啓発活動をしているんですね。

はい。あとは、発信の場としてグループ会社ポータルサイトを作って動画で取り組みを分かり易く配信したり、本社移転で新たにつくった“サテコラ”を360度カメラで撮影して紹介するなどしています。
あとは、この“サテコラ”のロゴ(※写真参照)も親しみやすいものにしました。難しいより分かり易い方がみんなに伝わる、ということでロゴも含めて、細部までこだわっています。

親しみやすさを重視したというロゴマーク(写真左)と本社サテコラの様子(写真右)

“サテコラ”?聞きなれない言葉ですが…。

“サテライト&コラボレーションスペース”の略で、その名の通り、サテライトオフィス機能とコラボレーションが生まれるスペースとして本社の中に造りました。全グループ社員が予約なしで使えます。
人が集まりやすくなる仕掛けとして、ドリンクやちょっとしたフードを販売するカフェも併設したんですよ。

それは羨ましい(笑)!確かに、カフェがあると「ちょっと一息つきながら話そうか」という感じで気軽にディスカッションできるシーンが増えそうですね。

はい、そこを狙いました(笑)。今までもサテライト用の共有スペースはあったんですが、個室ブースのような感じだったんです。そこをオープンスタイルに変えて、偶然の出会いを演出したり、打ち合わせにも使えるようなコミュニケーションを取りやすい造りにしました。本社だけでなく、他の拠点にも少しずつ増やしています。
ただ、外出中や自宅のそばに必ずしもサテコラがあるわけではないので、そういう時に外部サテライトのZXY(旧ちょくちょく...)を活用できればと考えています。

本社サテコラ社員利用時の様子(写真左)と横浜仲町台サテコラ併設のカフェで売られているパン(写真右)

働く場所の選択肢も増やしたんですね。

リモートワーク制度ということで、終日のサテライトオフィス勤務もしくは在宅勤務を認めています。
従来と違って、理由は育児介護だけに限定せず、利用できる日数制限も緩めました。一応、自律的に働けること、など条件は幾つかあります。リモートワークが向いてない職種もあるので、その部門ごとに利用判断は上長に任せています。
ただ、この仕事はできないと決めつけたり、マネジメントが大変だから、という理由でNGを出すのはやめましょう、そこはチャレンジしていきましょう!とメッセージを出しています。テレワークデイズやテレワーク月間に合わせて利用を勧め、そのたびに登録者数が増えています。

応接スペースの一角。開放的でリラックスした雰囲気の空間になっている。

テレワークを社員に広めるにはマネジメント層の理解がポイントになると思いますが、何か取り組みはしましたか?

当社の場合は、制度拡大の3か月前から全マネージャーを対象にワークショップをしました。主な目的は、働き方変革の狙いを伝えること、また1on1のコミュニケーションのやり方を伝えること。そこに必ず人事も同席してリモートワーク制度などの説明をしました。どんどんチャレンジしてみよう、でも、こういう事に気を付けてくださいね、と。

えっ!すべてのマネージャーが対象となると、かなり大規模だったのでは?

そうですね。特に1on1はロープレもしますから、最大でも一度に50人位しか参加できないので、20回くらい開催しました。実は評価制度も変えたので、よりコラボレーションやチャレンジを評価していくような風土にしていこうという説明も一緒に行いました。
一年間でいっきに準備をして2018年の移転を機に取組みを展開してきて、だんだん効果が出ていることを実感しています。実際に利用人数の増加などの数字にも効果が表れてきていますね。

社内へは順調に浸透していますか?

少なくともテレワークに関しては予想していた以上に利用者が増えています。2017年度末には230~240人だった利用登録者数が、半年後には10倍以上の約2,400人まで増えました。
ITはインフラ基盤が変わりましたが、だんだんと使いこなせるようになってきました。Microsoft Teamsを活用した遠隔会議も活用が広がってきました。全社員にモバイルPCを配備することが標準となっており、暗号化ソフトが入っているので申請なしで持ち運びOKです。
社用電話も今はPHSを支給していますが、今後はスマートフォンも順次支給する予定です。また、移転をきっかけにキャビネットの数を8割減らし、紙資料も減らすことができました。フリーアドレスを中心とした、仕事によってより良い場所を選んで自由に働くことに対して「いいね!」の声が寄せられています。

動き出した生産現場の働き方改革

生産現場の働き方改革も何か取り組みをしていますか?

生産現場の社員はどこでも働けるわけではないので、生産現場にあう働き方変革、例えばより休みを取りやすくする方向などの取り組みを進めています。
生産現場でもサブワーキンググループを作って、先述の5つの視点について現場に置き換えたら何ができるか 考えています。
例えば、「個人のワークライフマネジメントを実現するための柔軟な働き方はできそうだね」とか「フレックスはしたいよね」、「場所の制約はあるけど時間の自由度は上げられそう」等々、それぞれの具体策を話し合っています。本社ばかり働きやすくなってしまっては、全社プロジェクトとして私達が目指す社員主体の働きがい改革になりませんので、生産現場が置いてきぼりにならないようケアしないといけないと思っています。

本社と現場が足並みをそろえて改革を進めることが大事ですね。

工場のラインそのものの改善や自動化を進めるのと同時に、働く環境を整え、働きやすさやモチベーションが上がるようなことも取り組んでいます。例えば、トイレや食堂、休憩室、更衣室など全部を見直すことにしていて、この下期から工事を始めたところです。本社だけじゃなく拠点や工場含め全体的にバランスよく予算を振り分けるようにしています。

本日は、貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

株式会社リコー

設立
1936年2月6日
本社所在地
東京都大田区中馬込1-3-6
事業内容
オフィスプリンティング・オフィスサービス事業等
従業員数
97,878名(※連結従業員。2018年3月31日現在)
Webサイト
https://jp.ricoh.com/

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