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日本マイクロソフトの働き方改革事例(前編)

出社しないという「自由な働き方」が生まれるまで

投稿日:2019-04-08  最終更新日:2019-04-08  取材日:2018-12-20

日本マイクロソフト株式会社が取り組んだ事

  • 「出社しない=どこでも働ける」を当たり前化
  • 会社規模

    2,000人

  • 業種

    情報通信業

  • 対象職種

    全社員

マイクロソフト コーポレーションの日本法人である「日本マイクロソフト」は、品川に本社を移転した2011年以降、働き方改革に取り組んできました。経営層のコミットメントのもと、経営戦略の柱として、あくまでも、事業の成長を目指して行われた一連の取り組みは、事業生産性の大幅改善という素晴らしい結果を残し、働き方改革の成功事例として多くの企業の手本ともなっています。

今回は、そんな日本マイクロソフトの先駆的な取り組みについて、リアルエステートアンドファシリティーズ シニアポートフォリオマネージャーの山本泉様にお話を伺いました。

今回、お話を伺った、リアルエステートアンドファシリティーズ シニアポートフォリオマネージャーの山本泉様。

働くためのツールはすでに手元にあった

御社が品川(品川グランドセントラルタワー)に拠点を集約し始めたのは、ちょうど震災があった年ですよね。

はい、震災のひと月前、2011年2月のことですね。それまでも、意図して拠点を分散させていたわけではないのですが、当時はM&Aが非常に活発な時期でしたので、ロケーションをひとつにまとめるタイミングがなかなか掴めなかったんだと思います。

その頃は各拠点間でバスを走らせていたと伺いまして、ちょっと意外に思ったのですが。

そうですね。当時はまだ拠点の間を人が行き来して、対面式のやりとりを重ねることも少なくありませんでした。当社は、その頃も今と大差ないくらいのツールを揃えてはいたのですが、“紺屋の白袴”じゃないですけど、自分の会社が提供しているものを上手く活用し切れていなかったというのが正直なところですね

それでは、働き方に大きな変化が見られてきたのは、品川に拠点を集約して以降ということでしょうか?

そうですね。厳密には、震災後、ということになると思います。震災の影響で不要不急の出社を控えなければならなくなり、会社以外で働かざるを得ない状態に半ば強制的に立たされたんですね。

なるほど。

そこで、気付いていったんです。出社できない状況の中で、すでに与えられていたツールを改めて使ってみると、会社に来て自分のデスクに座っているのと全く同じ感覚で、何の不自由もなく仕事ができるじゃないか、と。テレワークするためのツールはすでに手元にあったんですね。そんな事実を、体験を通じて腑に落としていきました

やはり意識を変えるためには、実際の体験が欠かせないんですね。

そうだと思います。近年、多くの会社が働き方を変えようとして色々なチャレンジを始めていますが、パイロット(先行的な挑戦)」に取り組むということは、本当に意義のあることだと思っています。先頭に立ってトライアルを重ねていくことで、見えなかったことが、少しずつでも目に映るようになってきます。机上で働き方改革の計画づくりに頭を捻っていても、実際に体験してみないと、何が障害になってくるかは判らないんですよね。

本当にその通りだと思います。阻害要因は人事制度なのか、テクノロジーなのか、はたまた、それ以外の何かなのか…。取り組んでみて初めて可視化されるものもありますよね。

本社の品川グランドセントラルタワーの外観。

拠点集約のプロセス

この品川の本社ビルに統合される前は、東京都内にオフィスが7つありました。そこから、品川に拠点を集約していこうということで、まずは5つのオフィス機能を品川にまとめました。なので、統合後も都内には本社ビルとあと2ヶ所、計3つの拠点があるという状態でした。

すべてを一気に統合せずに、2拠点、残しておいたんですね。

はい。この品川の本社ビルは10年契約の賃貸なのですが、当初は、その10年間で人がいっぱいになるという計画だったんです。そのため、いっぱいになった後の人員の受け皿という意味でも、残り2つのオフィスを統合せずに残しておいたというわけです。

でも、今は、残りの2拠点も本社ビルに集約しておられますよね?

はい、それには理由がありまして。これは、日本だけに限らず、マイクロソフトの全社的な話なのですが、人はもう増やさない」と、人事・採用戦略が大転換されたんです。なので、当初の想定が、そこで崩れているんですね。つまり、この品川オフィスが10年間で人がいっぱいになるという状況は発生しない、と。

なるほど、そうですね。

そこで、残り2つのオフィスの機能・人員も本社ビルに集約できると判断して、追加で約350人を品川に移転させました。しかし、それでもなおスペースは余るという状態で、その時点で、本社ビルのワンフロアをお返ししているんですね。

「人を増やさない」という戦略には驚きました。実際に、今でも人は増えていないんですか?

もちろん、あっちで増やし、こっちで増やし、ということは必要に応じて行ってはいるのですが、全社的に見ると、人は増えていないですね

フリーアドレスオフィスの様子。

会議は意思決定の場─、テクノロジーによる時間の有効活用

今はどこの会社でも人員不足で、採用増というトレンドだと思うのですが、その中で、御社は逆の戦略を取られておられるという、その理由は何でしょうか?

弊社の場合、営業の形態が直販ではないため、単純に人を増やせば売り上げが伸びるというモデルではありませんので。

では、今いる人員でいかに生産性を高めていくか、ということなんですね。

そうです。そこで「テクノロジー」という話が出てくるわけですね。人が全く増えていないわけではなく、テクノロジーの活用による売上高の上昇に比べて、人の増え方のカーブの方が緩やかだということです。それが、つまり、生産性の向上というわけですね。

テクノロジーを駆使することで、人を増やさなくても、それこそ出社しなくても、以前よりも生産性を高めていけているというのは、本当にすごいことだと思います。

会社に来なくなっているというのは、裏返して言うと、会社に来なくても回せている状態が作れているということです。俗に言う、「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」というのがありますよね。この「ホウ・レン・ソウ」を旧来型のテクノロジーで実行していこうとすると、出社しないと回らないんですね。顔を合わせてコミュニケーションを取って、紙資料なども用意して、と。当社の場合は、「ソウ(相談)」の部分を、部分的に対面式で行うばかりで、「ホウ(報告)」と「レン(連絡)」については、今ではSkypeやteamsでほとんどカバーできています。ですので、相手がネットワーク上でコンタクトを取れる状態であれば、時間や場所は関係なく、円滑に仕事を回していけるんです

場所に縛られないから、時間が自由になるんですね。

そうですね。 “時間の有効活用=生産性の向上”だとすると、テレワークがうまく機能している時点で生産性は上がっています。その上で、何か重大な「相談」をする時と、「意思決定」や「決断」をする時に、決め打ちで会社に足を運ぶというのが、今の当社のスタイルになっています。なので、会議をするにしても、“わざわざデータを加工して作ったパワポ資料を一人の担当者が聴衆の前に立って説明するだけ”という従来型の会議は、もうほとんど行われていません。加工データを発表するだけのプレゼンテーションならば、物理的に場を共有しなくても、他の情報共有の方法で代替できますので。会議はあくまでも、「意思決定」の場だと捉えています。

出社しないという働き方

働く場所や時間について、ルールなどの制限は設けておられるんですか?

一切、設けていませんね。一般に、人事的な制度面の整備が最後の砦になってくるだろうと思うのですが、当社では2~3年前の時点で、現状に即する形で人事制度・就業規則を変えています。そして、その時に在宅勤務制度を廃止しました

え、在宅勤務をやめられたんですか?

在宅勤務を禁止したということではないんですよ。その時点では、もう「在宅勤務」は決して特殊なものではなくなっていたので、わざわざ制度として残しておく必要がなくなった、ということです

なるほど。

前々からフレックスタイムを導入していたんですが、その制度もなくして、今は、極端な話、1年365日、1回も会社に来なくても良いという勤務制度に改めています。1回も出社しないというのは極端な話ですが、それでも、「会社に来ない」というのは、当社ではごくごく一般的な働き方になっているのかなと思っています。

自由な働き方の根底にあるマイクロソフトの評価軸

ただ、同時に非常に重要になってくるのが、「評価制度」です。もともと外資の企業というのは、「結果評価」なんですね。プロセスは一切評価しない、結果のみを評価する。「出社しない=どこで働いても良い」という働き方に踏み込めているのは、根底にそういった評価思想があるからなんだと思います

部下が汗をかいて頑張っていると、上司はどうしても部下の「目に見える姿」を評価してあげたくなってしまいますが、そういった評価の仕方が常態化されると、必要ないのに会社に来て机にしがみついて汗をかいている、という不必要な時間の使い方を助長させてしまいます。

たしかに。よくあることかもしれませんね。

でも、当社の場合は、もうそういったことはほとんどありません。仕事も部署をまたいだプロジェクトベースのバーチャルグループでこなしていくのがメインになっていますので。「結果評価」という評価軸は、こういった働き方とうまくマッチしているんだと思いますね。

もちろん、その分マネジメントが大変ですけどね。自分の目に届くところに居ない部下の目標を立てて、しかも、部署をまたいだグループやプロジェクトでの彼/彼女の動きも把握しながら、評価していかなければならないので。

厳密に結果評価を行っていくということは、日本人にとっては、やはり難しさがあるところなんでしょうか? 情とか習慣的に。

個々人によるところも大きいと思いますので正直わからないですけど、当社としては、もうそうするしかありません。私の場合、そもそも、日本国内に上司が居らず、同僚も世界中に散らばっていますので。上司がそばにいた方が良いなと思う瞬間もあるのですが、それは望んでも実現できないことですし。

慣れていくしかない、ということなんですね?

そうですね。工夫しながら、慣れていくしかないんだと思います。

この事例と同じシリーズの事例

今回協力して下さった企業様

日本マイクロソフト株式会社

設立
1986 年
本社所在地
東京都港区港南(品川グランドセントラルタワー)
事業内容
ソフトウエアおよびクラウドサービス、デバイスの営業・マーケティング
従業員数
2,166名(2018年7月1日現在)
Webサイト
https://www.microsoft.com/ja-jp

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