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株式会社テンポスホールディングスの働き方改革事例

80代でも現役!シニア活用を支える“パラダイス制度”

投稿日:2019-09-20  最終更新日:2019-09-20  取材日:2019-07-30

株式会社テンポスホールディングスが取り組んだ事

  • パラダイス制度と定年制撤廃でシニア社員も安心して働ける職場づくり
  • 「自分の人生は自分で決める」定年も働き方も社員次第の人事ポリシーづくり
  • お客様が店づくりに参加できるカンタレス経営でコアなファンづくり
  • 会社規模

    1,600人

  • 業種

    卸売業

  • 対象職種

    全社員

    企画・管理

    販売・サービス職

厨房機器の販売などを手掛けるテンポスバスターズでは、60歳以上のいわゆるシニア社員が大勢活躍しています。
定年制を廃止する企業も増えていますが、単に制度をなくすだけでは現場はうまく回りません。
シニアも若手も安心して働ける会社であるために、どのような人材マネジメントを行っているのか、インタビューしました。

年間1万件以上の飲食店開業をサポート

まずは御社の事業について教えてください。

当社は厨房機器のリサイクル品を販売する店「テンポスバスターズ」として1997年に創業しました。
飲食店を開業するのに必要な物ならなんでも、食器や家具から大型冷蔵庫まで全部が揃うお店です。
徐々に新品も扱うようになり、現在では全国に59店舗を出店しています。(2019年8月現在)

店内には冷蔵庫や製氷機などの厨房機器、食器、調理器具などがところ狭しと並ぶ。

最近では販売にとどまらず飲食店向けコンサル業も行っているそうですね。

飲食業は競争の激しい業界で、開業から5年で約半分、10年で9割が淘汰されると言われています。
有名店で修業して美味しい麻婆豆腐は作れるようにはなったけれど、いざ独立して開店しようと思っても必要な食器の数や効率的なレイアウトなど店舗運営のことはさっぱり分からない、という方が多いんです。

一流料理人が一流の経営者であるとは限らない、と。

そうですね。
当社は年間約1万件の開業支援を手掛けていますから、店舗繁盛のノウハウがあります。
ですから長く繁盛する潰れない店づくりのお手伝いをするために、飲食店のお医者さん「ドクターテンポス」というコンサルサービスも昨年から始めています。

定年制を撤廃、シニア層が活躍

なるほど。それでは御社の働き方について伺わせてください。シニアの活用に力を入れていて、定年がないそうですね。

正式に定年制をやめたのは2005年ですが、実際には創業当初から定年がないも同然でした。
定年制を廃止する直前の就業規則には“定年99歳”と記載していたのでほぼ形式上の定年ですよね。だったら正式に撤廃しましょう、と。

なぜ定年がないのでしょうか?

年齢に関係なく一生働ける場を提供しようと考えているからです。
そもそもテンポスには年齢や性別、国籍で評価処遇を決める、という考えはありません。
だから「入社〇年目だから、そろそろ店長やってみる?」なんてことはなく、何ごとも本人の意思と成果で決めるのがテンポスの人事ポリシーなのです。
会社の制度を見直すタイミングで、一定の年齢が来たら退職というのは違うだろうということで撤廃に至りました。

新卒2年目の社員に商品の発注方法を教える68歳の女性社員。テンポスでは年齢の差を感じることなく仕事ができるのが特徴となっている。

そのような判断に至ったのは、社長の考えも大きいのでしょうか。

社長の森下は静岡の農家の生まれで現在72歳ですが、今でも月に1~2回は帰省してお茶や野菜を耕作しています。
農村では高齢になっても働くのが当たり前。
腰の曲がった90歳のおじいちゃんでも農作物を背負いながら山道を昇り降りする姿を見て育っていますから
90歳の方から見れば60歳なんてまだまだ若い。60歳で定年退職なんて考えられない」という意識が根底にあるのかもしれません。

年齢で評価を決めないという事は、昇進や役職も同じような考え方ですか。

自分の人生自分で決める」という考え方が人事の根幹にありますから役職も立候補制です。
早いと入社2~3年目で店長になる人もいますし、64歳の店長やパート店長もいます。
何歳だからとかパートだから、ではなく自分がどうしたいかを大事にしています。
例えば、パート社員が時間に制約があるのは家族の都合であって本人の能力ではありません
だから、決められた時間内で店長として能力を発揮してもらいます。
業種柄、飲食店に卸した冷蔵庫が壊れたら夜でもすぐに対応しないといけませんが、契約時間外であればエリアマネージャーが対応するなどサポート体制を敷いています。

給与制度にも成果主義が反映されているのでしょうか。

実は前期から、成果だけではなく、役職や勤続年数による等級も評価材料に加えるように変えました。
人事考課の中に所属店舗実績評価、個人実行評価、役割期待評価があり、その達成度によって成果給やキャリア給もしくはポスト給を決めています。

制度が変わるまではどんな給与制度だったのですか?

従来は積み重ねの考えがなく、3ヶ月ごとに給与が変わる仕組みでした。
3ヶ月ごとに振出しに戻るので入社2年目でも15年目でも同じ土俵ですし、やればやった分だけ評価されるメリットがある一方、3ヶ月ごとに元に戻るので人生設計の見通しがつかないというデメリットも同時にありました。
やればやった分だけ評価される制度でしたから、若くてやる気のある社員にとっては良かったと思うんです。
でも、だんだん会社が成熟してきて、社員の平均年齢が上がり家族も増えてなにかとお金が掛かる世代に差し掛かると、それまでの給与制度では心もとなく感じる社員も出始めるわけです。
そのような不安を払拭し、長く勤めてくれていることも評価できる制度にしよう、という狙いもあって変更に至りました。

シニア社員が安心して働ける、パラダイス制度

定年制撤廃に加えて、パラダイス制度を導入する事で長く働ける会社へと変化したそうですね。

パラダイス制度とは、60歳以上の正社員を対象に、雇用形態は正社員のままでも評価指標を緩やかに設定する制度です。
定年がないとはいっても高齢になってガツガツ働くのは難しいし、今までと同じ土俵で評価するのには無理がある人も出てきます。
今までと同じ土俵では働けないから辞める・・ではなく長く働き続けられる会社であるために、休日を1日増やしても給料は下げずに正社員のまま雇用し続けるという内容です。
例えば、パラダイス制度を適応する社員が販売職の場合売り上げ目標を半分にします。
半分ならばベテランなら週3勤務でも達成できますから、無理なく働くことができます

パラダイス制度を募集するにあたっての条件は?

・勤続年数10年以上かつ60歳以上の正社員
・過去3ヶ月の粗利の水準が最低限に近いか
・いきいきと仕事に取り組めるか の3つの条件があります。

今はどれ位の方がパラダイス制度を使っていますか。

対象者のうち約2割以上にあたる7人が使っています。
60歳以上の制度対象者でも「まだまだ若手と同じ土俵で勝負したいから今の時点では使わない」とあえて選択しない人も多いですね

バリバリ働きたい方が多いんですか!すごいですね。

今の時代の60歳ってすごくお元気ですよね、なんて言ったら高齢者扱いになって失礼にあたるかもしれませんが、とても“おじいちゃん”なんて雰囲気はありません。
私の所属する管理部門は半数以上が60歳オーバーですが、皆さんとても活躍されています。

シニアの方を積極的に採用するのには理由があるのでしょうか?

確かにテンポスバスターズ社約550名のうち3割が60歳以上ですが、新卒毎年20~30人位は採用しています。
若い人を採らないわけではなく、年齢や性別、国籍関係なくやる気や能力のある人を採用してきた結果自然とこうなりました。
ですからシニア“の”積極活用というよりも、シニアの人“も”活用している、と言った方が適切だと思います。
だって、全社員の3割を占める層をシニアだからといって活用しないの?ってことですよね。
実際に成績優秀者のうち3割くらいは60歳以上。
年齢関係なくすべての社員の能力を伸ばすというのは普通の考え方ではないでしょうか。

3割が60歳以上、課題はない?

今回お話をお伺いした人材事業部 實歳美幸様(左)と人事総務部・人材事業部 部長代理 杉本啓鑑様(右 )

3割が60歳以上、課題はない?

確かに、おっしゃる通りですね。とはいえ何か課題や問題点があったりはしないのでしょうか。

加齢による防ぎようのない作業スピードの低下や事故の危険性は懸念事項になってくるでしょう
重い物が持てなくなったり耳が遠くなったり、本人の能力とは関係なくできなくなることが出てくるのは事実です。
ただ、社長としては「それがどうした。重い荷物は持てる人が持てばいい。一分一秒を争うような現場ではないはず」と言っています。
また、人件費が高騰する中、安く採用したいわけではありませんが、時給に見合った動きをしてくれているかどうか、採算に合っているかはよりシビアに見ていく必要はあると思います。

加齢による諸問題については、フォローアップが必要になっていきそうですね。

実際には本人が異変を自覚して退職を申し出るケースが大多数ですが、そうでない場合には、話し合いで勤務時間や仕事内容を変えることもあります。

パラダイス制度を導入して社員の反応はどうでしたか。

不利益変更ではないのでマイナスの声は聞こえていません。
ガツガツ働くのはしんどいけれど長く働きたくて制度を選んだ人からは、ありがたいとの声は聞いています。

逆に、対象者以外の人の反応はいかがでしょう。

売上の上がってない店舗からの反応は、今後課題になるかもしれません
パラダイス制度利用者を置くよりも、実績の上がる別の人を置いて売上を上げたいと思う店長が出てくる可能性はあるでしょう。
例えば、店長として着任した店舗にパラダイス制度の正社員がいたとして、売り上げに貢献できるか不安だからバリバリ働く若い新卒が欲しい、でも人件費的には入れられない、となった時に悩むと思います。
そこが店長の腕の見せ所ではあるんですけどね。

マイライフシートで自分の人生を見つめ直す

人事ポリシーの「自分の人生自分で決める」は当たり前のようですが、実は突き詰めるのは簡単ではないですよね。

意外と目の前の仕事で日々精一杯になってしまうのが実情ですよね。
それでも、ささやかでもいいから「こうなりたいな」に向かって、ちょっとずつ動いたり、「こういうふうにやってみよう」という姿勢で日々の仕事に臨んだりする事は大事にしよう、と社員に伝えています。
社長がよく「人間らしく生きましょう」と言います。
人間だけが他の生物と違って「もっとこうしよう」とか「これを覚えたい」という意思を持つ、これに向かって取り組むのが人間なんだ。という定義づけをテンポスバスターズではしているからです。

なるほど。「自分の人生自分で決める」ために、具体的な施策はありますか。

マイライフシートというものがあります。
例えば、
・将来について…どんな人生を歩みたいか?5年後にどんな自分になりたい?そのためにどんな経験をしたい?
・自分について…今までの成長過程でどんな挫折をした?どんな強みを生かしたい?弱みは何?
・プライベートについて…健康、家族、資格、欲しいもの、挑戦したいこと などを毎年書いて、年二回の賞与面談の時に上司と話し合います。

テンポスバスターズで半年ごとに書くマイライフシート。様々な項目に自分の目標を書き込んでいく。

いざ自分と向き合って文字にしようとすると難しそうですね。

意外とプライベート面が難しいんですよね。
「今年はパッチワークを始めます!」とか「富士登山に挑戦!」とか一生懸命絞りだして書いていますが(苦笑)。
でも、書くことで日々取り組むべきことがはっきりしたり、「頑張ってボーナスを上げて車を買いたい」とか目標が明確になったりするものです。
また、部下が何を目指しているか上司が把握できるメリットもあります。
あとは働くスタンスも当社では社員自身が決めるんですよ。

激流コースor幸せコース、働くスタンスも自分で宣言

働くスタンスとは?

店舗の販売員と一口にいっても人それぞれどう働きたいかは違いますから、以下の4つのコースから選んでもらうんです。
・激流コース
・激流幸せコース
・幸せ激流コース
・幸せコース


どういうことか野球に例えると、甲子園に行きたい人と草野球を楽しみたい人がいるように、同じ野球といえども取り組むスタンスは人によって違います。
甲子園を目指すならそれにふさわしい練習が必要だし、草野球をしたい人に甲子園の練習を押し付けるのはお互いがつらいだけですよね。
選んだコースによって会社から与えられる課題の質や量、上司からの指示の出し方などが変わります
激流コースで毎月与えられる課題が10個あるとしたら、幸せコースは2個とか。
スタンスなので評価とは一切関係ありませんし、幸せコースでも高い成果を上げる人もいます
ただ、甲子園を目指さない人に「行くぞ!」と押し付けるのは迷惑ですから、その辺のすり合わせをしておきましょう、ということです。
上司が幸せコースで部下が激流コースの場合、その上司の指導だけでは部下が望むマネジメントができませんから、エリアマネージャーが育成をサポートする事もあります。

カンタレス経営で商品開発や試食会に顧客が参加?!

最後に、グループ会社のレストラン「あさくま」についてお聞きできますか。ユニークな経営手法をとられていると耳にしました。

あさくま(※)は創業70年、名古屋発のステーキレストランです。
コアなお客様が多いのが特徴で、3世代で来店されるお客様も沢山いらっしゃいます。
老舗ですから、新しい事をやると喜んでくれるお客様とそうでない方、どちらもいらっしゃいます。
サラダバーを始めた時にも「あさくまはそうじゃないんだ!」と反発するお客様がいらっしゃった程で、その方は約70店舗のうちサラダバーのない店舗だけにしか行かないそうです。
それだけ昔ながらの店を愛して下さっているんですね。

※飲食店支援のノウハウを活かすべくテンポスグループと「あさくま」が2006年に業務・資本提携を結ぶ。2019年6月にはジャスダックに上場。"笑って楽しめるエンターテイメントレストラン"を掲げ、店内ではセルフクッキングコーナーの実施や楽器の生演奏、キッズグリル体験などユニークなイベントを積極的に行っている。

そんなあさくまで「カンタレス経営」を実施しているそうですが、どのような事をしているのですか。

カンタレスとはカウンターレスを略した弊社の造語です。
カウンターを取っ払った店という意味ですが、物理的なカウンターをなくすわけではなく、客と店という垣根を越えた関係性を指します
114万人いるあさくまのメール会員はいわばお店のファン。
その方々に「あさくまをもっと良くするためのお手伝いをしていただけませんか?」とメールで呼びかけて、実際にお店づくりに参加してもらっています

お客様が店づくりに参加する、とは具体的にどのような事を?

例えば
お料理プランナー…デザートやサラダバーなどメニューの商品開発
ガーデニングキーパー…敷地内のガーデニング
抜き打ちチェッカー…オープン前の抜き打ち味見 など様々な分野でお店の運営に携わっていただいています。

特にこの「抜き打ちチェッカー」は大好評で、2万件を超える応募がありました。
現在は選ばれし61名の方に活躍いただいています。
ほかにも、あさくま安城店のオープンの際には、「開店時応援スタッフ」を募集し、4名の方に新人スタッフの教育、トレーニングをお願いしました。
現在募集中のカンタレスは「企画プランナーさん」です。
2か月に一度集まって、店舗イベントやお客様に喜ばれる店頭企画の仕事です。

あさくまの会員のなかでも料理が得意な人がお料理プランナーとして新メニューを開発します。実際に試食会では厨房に入って調理し、試食するのもあさくまの会員さんたちです。

本当に人事制度にも店舗運営にもユニークな取り組みが沢山ですね。本日は有意義なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

今回協力して下さった企業様

株式会社テンポスホールディングス

設立
1997年3月
本社所在地
東京都大田区東蒲田2-30-17 サンユー東蒲田ビル
事業内容
厨房機器販売、飲食店向けコンサル事業、ステーキレストラン「あさくま」の運営等
従業員数
1,676名(2019年4月期/グループ連結・パート社員含む)
Webサイト
http://www.tenpos.co.jp/

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